資本主義社会のゆくえ①
戦後の資本主義社会をリードしてきたのは、アメリカ、イギリス、フランス・・・第二次世界大戦の戦勝国である。
戦後、戦勝国側は国際連合(加盟国51カ国)を国際平和機構として設立した。そのうち常任理事国がアメリカ、イギリス、フランス、ロシア、中国であり、『集団安全保障による世界平和の維持』を理念としている。
それに対して敗戦側はナチズム、ファシズムなどの思想から枢軸国とされ日本、ドイツ、イタリアを含む8カ国となっている。
歴史は勝者の論理なので、勝者が過去に行った暴挙についてはあえて語られず、常に敗者が極悪非道な存在として語られる。
勝者側にも敗者側にも葛藤の末の選択があったわけだし敗者なりの正義もあったわけだが、敗者になるとその正義は悪と定義づけられる。
正義の概念はいつ覆されるか分からない。
1945年、日本は初めて世界大戦の敗戦国となったが、敗戦国日本に対してもたらされた資本主義社会は、幸いな事にひどく過酷なものではなかった。シベリア抑留を除いては奴隷制度も無く収容施設で虐待されることも無く、国内では概して自由と豊かさがもたらされた。それまでの男性中心の社会も幾分和らいだと思われる。
その代わり最初の世界のための工場となった。(ドイツと共に)
ちなみに2代目を継いだのは中国だ。
戦後の日本は、自国の復興のためと隷属的な意識は低かったが結果として世界のために一生懸命働いた。そのため急激に経済は拡大した。
しかし、その裏にはいくつも弊害があった。
まずは公害問題だ。水俣病(1956年熊本県)、四日市ぜんそく(1961年三重県)、新潟水俣病(1964年新潟県)、光化学スモッグ発生(東京)、そして東京湾は汚染が進み漁獲量が激減した。
イタイイタイ病(1922年富山県)、足尾銅山鉱毒事件(1878年栃木県、群馬県)など明治時代から始まっていた公害も多数あるが・・・。
その後もダイオキシン、アスベスト問題…、使い捨てのプラスチックのゴミも大量に増えた。日本の高度経済成長期と言われた時代は産業の発展と共に公害も進み、現在でもその影響が残っている。
環境を汚染し、損害は甚大だ。
人は経験しないと分からないから、儲かることのために負の部分の想像が足りなかった。
日本の高度成長期のやり過ぎは、公害以外に別の弊害も生んだ。
日本人は、世界が100年以上かけて成し遂げるであろうと思われる技術革新をわずか数十年でやり遂げてしまった。あらゆる電化製品、運送車輌・技術、インフラ、ゲーム、アニメ・・・。
それらで外貨を獲得した。現在日本は、世界第一位の債権国である。
それらの新しい技術や製品、サービス、外貨獲得は戦勝国側の大いなる脅威になった。だから、それがジャパンバッシングへと繋がった。
我々日本人はただ、より良く新しいもの、購買意欲が湧く魅力的な商品、製品作りを追い求めただけなのだが、そのスピードに世界はついてこれなかった。
もちろん、技術革新のもとやヒントとなる重要な先進技術を生んだのはアメリカ、イギリス、フランスである。
アメリカは特許の数も世界第一位だ。(現在、中国がもの凄い勢いで追い上げているが。)
なので、日本が再び世界最強とならないよう圧力をかけ封じ込めるためジャパンバッシングで日本の国力を削いでいる。
日本の先進的な企業はいつの間にか外国の国々に召し上げられてしまった。分かり易いのが、日産自動車、武田薬品、東芝、ソニー・・・。
バッシングを受けたと思われる企業も数えきれない。過去の株価の推移を見ればわかる(ものもある)。
半導体の企業も国内で続けることを阻止され雲散霧消の状態で、現在、新しく再出発を始めようとしているが、だいぶハンデを食らっている。
資本主義経済の指標、平均株価であるが、日本は1950年から記録があるが、戦後、経済成長を続け、日経平均株価は1989年に38,957円44銭の最高値をつけた。しかし、バブル景気は崩壊(1991年)し、経済、社会は大打撃を受け、日経平均株価は下落に転じた。
その後、日経平均株価は2万円を少し超えると下落に転じるサイクルを繰り返し、リーマンショックで7162円90銭の最安値をつけた後、2013年からアベノミクス政策を経て2021年にようやく3万円に近づいた。
その後は、コロナ禍とロシアのウクライナ侵攻が日本国内や世界経済にマイナスの要因を与え現在に至っている。
日本が豊かになり債権国となったのはアメリカを始めとする日本製品やサービスを買ってくれた国々のお陰だ。
アメリカの貿易赤字は顕著であり、アメリカの双子の赤字(貿易赤字と経常赤字)は1992年にピークに達した。
アメリカは、1986年純債務国に転じている。
現在、日本は世界一位の債権国であり、対外債権は300兆円あまりある。
それに対してアメリカは債務国であり1000兆円を超えている。
日本は世界の工場として努めた結果、債権国として存在し経済の基盤は悪くない。
現在、その世界の工場の地位?を受け継いだ中国の経済成長は著しく、世界を脅かすところまで育っている。中国は、1970年代から改革開放政策、1990年代前半から社会主義国家でありながら市場経済を取り入れ、日本に次ぐ世界第二位の債権国に成り上がった。
金に物を言わせ新興国を債務国とし、借金漬けにしている。債務国側の経済は上手く回っていない国もある。借金漬けの罠にはめ利用しようとしていると揶揄されても否めない感がある。
このように、世界は色々な紆余曲折がありながらも戦後も発展し続けおり、資本主義経済は世界を豊かにしている。
個人レベルでは、満たされず苦しんでいる人達もまだまだたくさんいるけれども。その話の続きは言いたい①~へ繋がる。
話を戻す。
その豊かさは債務国であるアメリカ、イギリス、フランス・・・の金融資産がもととなっている。たくさんのお金を世界に供給しているということだ。
これらの債務国の存在のお陰で債権国も成り立っている。
しかし、これまでの通念である損益や金銭の常識を変えないとすると世界の牽引側だった国々が、数字の上では芳しくない状況にあることになる。結果としては既にまかり通っているのだが。
膨大な債務をどう考えるべきか、どう処理するべきか常に苦慮しているように見える。赤字である金額に対して、謙虚に考えている人達が多く存在している。
日本でもよく問題視される財政赤字の考え方である。「財政の赤字(借金)を未来に回すな!」「財政が破綻する!」という意見がよく聞かれる。
しかし、財政赤字のもとである国債は毎年償還があるから、借金は一部ずつではあるが毎年返還しており踏み倒しているわけではない。だから、『借金はあるけれども全てを未来に回しているわけではないよ』と言ってあげてほしい。
『破綻する、破綻する』と言っているが、経済活動を止めない限り完全に破綻することはない。
需給バランスが崩れて物価が上がるのは、供給が足りないからだ。
現在、世界の経済は概ね上手く回っている。
仮に世界経済の総合計のバランスシート(貸借対照表 資産=負債+純資産)を作ったとすると、例えば資産1500兆円=負債1000兆円+純利益500兆円となり、この例の場合、500兆円分の純利益が存在する状態になる。
この純利益の部分が、単純にこの七十数年間に生み出された様々な産業品、インフラ、文化財とする。電化製品、自動車、携帯電話・・・全ての製品、それら固定資産が増大しているので純利益はプラスになっている。(正確なデータに基づいておらず適当な例として示しただけなので、どなたかがもっと正確なデータを持っていると思うが。)
仮にこの例が正しいとすると500兆円もの新しい固定資産が生み出されたので負債には大きな意味があり価値がある。世界経済を潤わすために必要な資金だった。その負債を請け負って出資しているのが債務国だと解釈できる。まさしく資本主義経済。
このように世界経済は上手く成り立っていると言える。
しかし、かといってこのまま米英仏の債務国(投資国)、我が国のような債権国(労働国)のままその差が拡大していくのも納得できないような気もする。
いつまでも戦勝国のいいように使われる存在の国のままでいるのもどうなのか・・・。このままだと中国も強国の仲間入り(もともと常任理事国だが)し、日本はいつまでも労働国のままなのか?それは、認めたくない気がする。
債権国である日本が更なる資力を持たないように懸命に証券市場をコントロールし日経平均株価が上がらないようにしているようにも思える。
そして資力こそが力であることを体現するために証券市場によって米英仏などの債務国の企業の資産価値を懸命に高めようとしている。
今やアメリカのNYダウは33,000ドルを超えている。
資本主義社会は結局のところ、アメリカ、イギリス、フランスが舵を取っている、実権を握っていると言っても過言ではない。
彼らの方がしたたかでうわてであることは間違いなさそうだ。
しかし世界は今、中国の強大化とロシアのウクライナ侵攻で甚大な損害を被っている。中国もロシアも世界平和の維持のための常任理事国なのだが。
資本主義経済国のリーダーのアメリカ、イギリス、フランスは核保有国であり、弱者に成り下がることはまず無いと思われるが債務国上位となっており少し気弱になっている感がある。
反面、中国は債権国となり軍事力も拡大しているので強気一色だ。
現在の世界の資本主義社会の今後がどう展開するのか目が離せない。
R4.12.10
コメント